世界は称賛に値する

日記を書きます

1巻は微妙と思いやすい

▼のちのちすごく好きになる作家でも、最初の出会いの瞬間から「ものすごくすげえ」と思うことは少ないな、と思う。ともすればそれは私の人格の持つ癖なのかもしれない。先日、成田良悟氏の『ヴぁんぷ!』を読んで、そのことをふとを意識した。成田良悟氏の最初の一冊に対しても、それほど劇的なおもしろさを感じなかったからだ。秋田禎信氏にしても上遠野浩平氏にしても、最初の一冊ではそれほど「すごいひとだ」的なことは思わなかった。でも今はとても好きだし、すごいひとだと思っている。とはいえ、最初の一冊だけで気に入った作家が皆無なのかと言えば、そんなことはなく、だから、絶対にそうだと言うわけではない。傾向性の問題である。▼まあ、最初に読むのはその作家のデビュー作であることが多いから、デビュー作にはやはり力不足なところがある、という関係で考えたほうが正確なのかもしれないな、とは思う。でも、好きになってから再度デビュー作を読み返したりしてみると、今好きだと思ってるところを全然読み取れてなかったな、という風に思わされることも少なくない。そうなると、やっぱり、デビュー作の時点では『私が好きだと感じられるところ』が少なかったんだけど、巻数を重ねることでうまくなっていって『私が好きだと感じられるところ』が増えていった、というふうに考えるのは、うまくない。一冊目の時点では私が読み取れてなかったが、二冊目三冊目でようやくそこに気づくことができた、と考えたほうが正確だろう。という風にまとめてしまうのは単純化しすぎかな。▼ともかく、とりあえず一冊読んでみただけではそのおもしろさにたどりつけない、ということがあるようだ、とは思う。つまりそれは、今までとりあえず一冊だけ読んでみて「普通かな」と思っているような作家の作品のなかに、好きになれるものがまだある可能性は高い、ということだ。とか考えだすとキリがない、という話ではある。