封印再度(森博嗣)

封印再度 (講談社文庫)

封印再度 (講談社文庫)

 教育には水が流れるような上下関係がある。しかし、学問にはそれがない。学問にあるのは、高さではない。到達できない、極めることのできない、寂しさの無限の広がりのようなものが、ただあるだけだ。学問には、教育という不躾な言葉とはまるで無関係な静寂さが必要であり、障害物のない広い見通しが不可欠なのである。小学校、中学校、と同じように、大学校と呼ばない理由は、そのためであろう。大学とは、教育を受けるのではなく、学問をするところではなかったのか?

 クリスマス、正月、バレンタイン・デイなども、強制的に送りこまれてくる飾りものだ。好きなとき、好きなだけ楽しんだほうが良いのに、人々はどうして、外部から押しつけられたものに、あんなに夢中になるのか……。支配されることの美徳だろうか。いや、そんな高級な嗜好とも思えない。おそらく、自主性を保持するためのエネルギィを本能的に節約しているのだ。蟻の集団と同じメカニズムで、人間も行動している。
 なるほど、支配されること、隷属することの美徳か。
 面白い発想だ。
 それも、ひょっとしたら、良いものかもしれない。
 美かもしれない。