世界は称賛に値する

日記を書きます

▼一編目は表題作《蛇心の追走》で、作者は小川楽喜。この作者の書いた物語を読むのは初めてのはず。おもしろさ的にはそれなりかな、と判断。強いて言うなら、伊野冬子という登場人物の描写が薄いこと、が、難点だったのではないか、と思ったりした。この女性の心情/心理が物語に大きく絡んでくるのだけど、そのあたりの描写が薄かった(と感じた)ため、いまいち感情が動かなかったのだ。背景に《安珍と清姫》の伝承があったあたりは、良かった。が、その絡み方も中途半端かな、と思った。清姫が強大な力を持つ妖怪なのだから、舞台や状況をもっと深慮して、派手な戦いを演出しても良かったのではないかと思う。敵の中途半端な強さのせいで、楽しさも中途半端になってしまった、なんて印象。主要人物《赤い靴》メンバーも、最後の戦いでは苦戦している様子だったけれど、その描写も、工夫すればもっと《苦戦してる感》を強くできたんじゃないかな、とか。結構不満ばかりだけど、読む時間が苦痛だった、なんてことは思わないし、つまらなかったかと言われれば、確実に否定する。要は、そういう曖昧な領域に落ち着いのであった。