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『十二大戦』(西尾維新)を読んだ

印象記 終了記 読書記

十二大戦

十二大戦

「では、試みに少し考えてみようかね……己の行動原理を言語化するのも、たまにはよいだろうからね」サーベルをしまいながら、そんな風に思案顔をする。そしてすぐに、「ふむ」と答を導き出したようだった。良が、ずっと導き出せずにいた答を、本当にすぐに。「まず、正しいことをしようとするだろう?」言って、鞘にしまったサーベルに手をかけた。「次に、正しいことをする」鞘から刃を、居合いのように抜いた。「以上だ」1・正しいことをしようとする。2・する。
 このとき感じた落胆は、正直、崖から突き落とされたような気分だった──理論が天才過ぎて、何も伝わってこない。子供相手だと思い込んでいるから、あえて噛み砕いた表現をしたのかもしれないが、だとしたら、噛み砕きすぎだ。それができないから苦しいんだと言っている──苦しいのか? そんな苦しさは、とっくに忘れたはずじゃなかったのか? 悩みは酒に溶けてなくなっていたわけじゃあなく、ずっとずっと──苦しんでいたのか? 「わかったかね? つまり、正しいことというのは、しようと思わなければ、できないということなのだがね」
──第十戦 虎は死んで皮を残す

▼▼西尾維新が9つ原作を挙げた短篇企画『大斬』内の漫画の一つ、「どうしても叶えたいたったひとつの願いと割とそうでもない99の願い」に対して、当初は、まあまあ好きかも、って程度の評価を抱いていたのだけど、前日譚としてのちのち著述された『十二大戦』を読んだあと、改めて読み直してみたら、わ、まじかー、と思えるようになっていたので、つまり、素敵な前日譚であったと言えると思う。▼▼『掟上今日子の備忘録』が楽しかったので西尾維新小説が読みたくなって買った。
▼▼異能戦闘に関しては、想像よりもあっさり、というか、活かしかた使われかたの意外性や相手の裏をかきまくるような戦略や戦術の描写がもう少し濃いめのものを望んでいたのだけど、ぜんぶの戦いを一冊の中で完結させよう、って狙いで描くなら、これくらいが程良いところなのかな、とも思えたので、まあ文句はなし。相性次第で瞬殺もあり、と解釈するほうが適切な気もしたし。戦闘の化かし合いはともかく、流れはやっぱり、西尾維新節と言える「意外性」に塗れてた気もするし。素敵に読めない流れではあった。
▼▼強さ弱さも、活かしかた次第、タイミング次第、流れ次第、相性次第、ってところがあって、実は誰でも勝つチャンスはあったんですよー、っていう風情が出ていた──比較的明瞭に「各自が勝ちうる可能性」が語られていた、のは、好きだった。
▼▼まあでも結局のところ、「寅」の描写の素敵さ、が、読後感のよさを押し上げてるところがあるなあ、とは思った。「丑」の印象との相乗効果もあっただろう。やっぱり、登場人物が、皆、素敵だった。「卯」のプロフィール読みたかったな。

大斬─オオギリ─ (ジャンプコミックス)

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  • 作者: 暁月あきら,小畑健,池田晃久,福島鉄平,山川あいじ,中山敦支,中村光,河下水希,金田一蓮十郎,西尾維新
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/04/03
  • メディア: コミック
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